プラチナスターツアー ~ハーモニクス~ 第4話 Desire

 

(劇場にて)
P (昨日はあの後、静香からの連絡はなかった。今朝もまだ姿は見えないが・・・)
(いずれにせよ、明日の夜に再レコーディングだ。まずは、できるところまでやってもらうしか・・・ん?)
??? 「♪~・・・」
P 「・・・? この歌は・・・?」
(劇場の屋上へ移動)
P 「やっぱり、ジュリアだったか。」
ジュリア 「・・・あんたか。ちょうどよかった。ちょっと、話したいことがあったんだ。」
P 「静香とのこと・・・だよな。再収録、やっぱムリそうか?」
ジュリア 「どうかな・・・。あたしは自信があるんだけどな。明日の夜にはゼッタイ間に合うって、今でも思ってる。」
「イメージがあるんだよ。そのつもりでシズと歌えば、きっとスグに・・・ウチらのロックが見つかると思う。」
「なんなら明日の夜がぶっつけ本番になっても、どうにかなる気がしてる。・・・シズとなら、なんとかなるってね。」
P 「すごいな。そこまで自信があるなら、俺も安心だけど・・・。」
ジュリア 「ただ・・・。なあ、プロデューサー。」
「それって本当に、シズのためになるのか?」
P 「・・・え?」
ジュリア 「思っちまったんだ。シズの目指すアイドルって、あたしのロックとは違うんじゃないか・・・ってね。」
「見てればわかるんだよ。シズはたぶん・・・。この劇場で一番、アイドルに真剣だ。」
P 「・・・そうだな。静香がアイドルに真剣なのは、確かだと思う。」
ジュリア 「もちろん、あたしだって真剣だぜ? でも、あの子にとってのアイドルは、そういうのじゃない。」
「あたしにとってのロックとも違う。シズは、たぶん・・・もっと・・・。」
「・・・」
「なあ、プロデューサー。今回のあたしとのユニットに、シズを・・・。」
「あたしのロックに、あの子を染めていいのか?」
P 「ジュリア・・・。」
如月千早 「ふざけないで。」
ジュリア 「って、チハ!?」
P 「千早?・・・あ!」
ジュリア 「急にどうしたんだ? なんでこんなトコに・・・?」
如月千早 「待ち合わせって言ったのに、来ないから探しに来たのよ。今日は私と撮影の仕事でしょう?」
ジュリア 「あっ。・・・あああっ、そうだった!」
P 「そうだよな。ごめん千早、俺もつい、気が逸れて・・・。」
如月千早 「いえ、仕方ないかと。そのことはいいんです。それより・・・ジュリア。あなたの音楽はその程度なの?」
ジュリア 「・・・え?」
如月千早 「誰かに遠慮しなくてはいけないもの? 誰かを巻き込んでは可哀想なもの?」
「誰かの夢を壊してしまうものなの? 違うでしょう?」
「歌は、夢を見せるもの。夢をあらわすもの。心を震わすもの。心に寄り添うもの・・・。」
「どんな歌でも、それは同じはず。」
ジュリア 「チハ・・・。」
如月千早 「そんな、歌を心のままに歌うあなたを、私は尊敬しているわ。仲間として、誇りにすら思ってる。」
「でも、私以上にそう思っていたのは誰なのか・・・。あなたも、よく知っているはずよ。」
ジュリア 「・・・!」
P 「・・・そういえば、ジュリアとのユニットを発表した時も、うれしそうだったな。」
(喜びと期待に、目を輝かせて・・・)
ジュリア 「・・・ははっ。まいった・・・。そうだよな。何をらしくないこと言ってんだか!」
「せっかく、ロックに決めるチャンスだってのに。突っ走らないでどうするって話だよな!」
如月千早 「ふふ、そうね。それから、もうひとつ。」
「そう簡単にあなたの色に染まるほど、あの子は甘くないと思うけど。」
ジュリア 「・・・。はっ、確かにそうかもな!」
「サンキュ、チハ! おかげで目が覚めた。なんつーか、いろいろ考えすぎてたぜ。」
「OK、やってやるさ。あたしのありのままを思いっきりシズにぶつけて・・・。」
「あたし達だけの歌を、作り上げてみせる。期待しててくれよ!」
如月千早 「・・・ええ、心から楽しみにしているわ。でもその前に、今日の撮影の仕事をきっちりと。」
ジュリア 「あ、ああ、そうだった。 せっかくロックな気分なのに、またフリフリの服を着るのか・・・。」
如月千早 「ふふっ、遅刻したら、それだけ終わるのが遅くなるわよ。急ぎましょう。」
ジュリア 「わかったよ。よし、今日は一発でキメてやる。フリルでもリボンでもかかってこい!」
P (ジュリアの表情から、迷いの陰りは消えた。でも、もう一人・・・。静香とも向き合わないと)

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