Mr.Eのアイドル業界レポート『アリーナ最前列』
[Stage 50] 本物の「○○なアイドル」
世の中の食べ物は不思議なもので、絶対に合わないだろうと思ったものが、意外にも美味しいものがある。たとえ見た目はアレでも(いや、やはり見た目は良い方が嬉しい)、口の中で驚くべきハーモニーを奏でる。その中で最も印象に残ったものが、千葉県銚子市で食べた『醤油ソフトクリーム』だ。
ヤマサ醤油の工場を見学(要予約)した時に、工場内の売店で売っていた醤油ソフトクリーム。最初は「うっ」と思っていたが、いざ食べてみると意外にも美味しい。塩っぱさと甘さのバランスが絶妙なのだ。スイーツに醤油……一見すると合わない様に思える組み合わせ。しかしよくよく考えると、みたらし団子のタレも醤油をベースにしている。故に組み合わせとしては正統派なのだ。
さて今回の最前列は『意外な食べ合わせ』のご紹介……といきたいところだが、編集担当のSから「これはグルメ雑誌じゃないぞ☆」と釘を刺されてしまった。なので醤油ソフトクリームの味を思い出しながら、今回も新たなアイドルの話を綴っていきたい。
『ロック』と『アイドル』。イメージとしては相反するであろう2つのキーワードを、見事に融合した人物がいる。それが『765プロライブ劇場』に所属するジュリアだ。
「いる」と断言してからまだ数十文字しか進んでいないが、果たしてジュリアは『ロックなアイドル』なのだろうか。765プロの公式プロフィールにて、彼女はこう表現されている。
『目指すはロックの頂点!最高にクールでスタイリッシュな…アイドル!?』
そう、疑問系である。765プロは彼女をアイドルとして紹介している。しかしその直後に「彼女はアイドルなのか?」と疑問を投げかけているのだ。これは新手の哲学なのか。そしてジュリアという『アイドル!?』は一体、何者なのだろうか。
今だから正直に話そう。765プロライブ劇場、そして『39プロジェクト』の存在は知っていたが、ジュリアに関してはほぼノーマークであった。彼女を知るきっかけは何処にあるのか。私は藁にもすがる思いで、とあるコミュニティで知り合った某N氏に聞いてみた。するとどうだ、彼は剣幕を変えて力強く喋り始めた。
「とりあえず黙って観に行け!とにかくヤバいから!特にソロ曲!あれはヤバいぞ!」
いや、何がどう「ヤバい」のだろうか。前知識なしの私には全く分からない。彼の話から唯一分かるのは「ジュリアはヤバい」という事だけだ。しかし某N氏の猛プッシュは終わる気配が全く見えない。既に私の体は土俵を割っている。このままでは国技館はおろか、隅田川まで寄り切られてしまう。彼を止めるために、私は目の前で「ソロ歌唱メイン公演」のチケットを予約した。
公演当日。豊洲の運河から吹き付ける海風を受けながら、765ライブ劇場へ足を踏み入れた。アイドルのライブステージは何百回と行ったことがあるが、765プロのライブは久しぶり、そして765ライブ劇場自体は初めてだ。2,000席を超える大きな、そして清潔感あふれる真新しいホールは、平日昼間にも関わらず8割ほど埋まっていた。ここでも765プロの人気が伺える。
某N氏への対抗心からか、今回は予習無しでのライブ参加だ。どんなステージを観られるのだろうか。そわそわしている様子を察したのか、隣の席にいた『天空騎士団』の法被を着た男性から、39プロジェクトの事を初め、色々とご教授いただいた。さらに私が手ぶらで来た事を察知したのか、なんと24色のカラーチェンジ式ペンライトまで貸していただいた。この場を借りてお礼申し上げたい。
そうこうしているうちに迎えた開演時間。オープニングの『Brand New Theater!』が流れると、ほんわかした雰囲気が一変。ホールを包み込む高揚感と熱気に、私自身のボルテージも上昇しまくりだ。入れ替わり立ち替わり、テンポよくステージが進行する。そして8人中の7番目、本日のお目当て・ジュリアの出番がきた。
暗転したステージからギターの音色が響き、スッと一筋のスポットライトが当てられる。その光の先には、開演時には無かった青い星を左頬に携えたジュリアの姿。ギターを弾きながら、彼女のソロ曲である『流星群』をゆっくりと歌い出した。
その時、不思議な事が起こった。本能なのか私は思わず身構えてしまった。何か大きな『衝撃』がやってくる予感がしたのだ。そして次の瞬間、本能が正しかった事が証明される。
「全力で、かかってこいやーっ!」
彼女の咆哮でパチーンと、私の『スイッチ』が入った。 ヤバい。この一言に尽きる。うまく表現できないが、とにかくヤバい。時が経つのを忘れてしまうくらいヤバい。某N氏の言葉を半信半疑で聞いていた事を、今になって後悔するくらいだ。
では何が「ヤバい」のか。私なりに解釈させていただこう。前述の通り、当時の私はジュリアの事を知らなかった。事前情報なしのノーマーク、そんな彼女のパフォーマンスに何故惹かれたのか。
恐らく『空間』を共有することが出来たからなのだろう。理論ではなく理屈の世界になってしまうが、ステージを観てもらうだけでなく、観客と一緒にステージを作ってもらう。能動的かつ受動的に作り出される、一度しか無い『ライブ』の空間だからこそ味わえる快楽。これこそが私の『スイッチ』が入った要因だと思うのだ。
自らの想いを伝えるように、全身全霊をかけて歌うジュリア。
その歌声に呼応するかのように、どんどん熱量を増していく観客席とコール。
その熱量をさらに煽るかのような、力強いギターの音色。
まさに魂と魂のぶつかり合い、やるかやられるかの真剣勝負。
ステージと客席の間にあるカメラ用のレールは、さながら英国議会のソードライン。
スピーカーから襲ってくる音の波が、私の五臓六腑を直接に揺さぶってくる。
そしてその揺さぶりが、私のボルテージをさらに高めていく。
色んな要素が合わさって、様々な感情が私の中から溢れ出してくるのだ。なるほど、某N氏が普段から多用している「エモい」とはこの事なのか。まさに圧巻のパフォーマンスだった。
ライブ終演後、気がついたらCDを購入していた。私はすっかり彼女の虜になっていたのだ。そしてライブの余韻を噛みしめる為に、私はあえて遠回りをして帰ることにした。地下鉄の入口を素通りして、ちょうど通りがかったバスに、行き先も確認せず飛び乗った。編集担当Sとの会合に30分遅刻した原因はコレだという事を、あえて紙面にて告白させてもらおう。
765プロは多種多彩な楽曲をリリースしている。楽曲ジャンルに囚われないスタイルは幅広い層から支持され、これまで多くのファンを魅了してきた。当然ながら私は、その確固たる姿勢に対して尊敬の念を抱いている。しかし裏返せば、常に「偽物」という評価が付き纏う一因にもなるのだ。
では、ジュリアはどうだろうか。実際にステージパフォーマンスを観て、私はついに個性派集団である765プロから、本物の『ロックなアイドル』が誕生したと確信した。ジュリアの歌声は私をはじめ多くの人の心を『ロック--揺さぶ』った。まさに『ロック』を体現したのだ。
確かに、まだまだアイドルとしては荒削りな部分も多い。そしてアイドル慣れしていないと思わせるような仕草も時折見られた。しかしそれは彼女の伸びしろであり、今現在においては最大の長所でもある。果たして『765のロックスター』は、これからどう成長していくのか。CDプレーヤーから『流星群』を流しつつ、こう締め括らせていただこう。
765プロのアイドルを知らない事には、ロックなアイドルの良さは分からない。しかし残念なことに、これまで765プロにはロックなアイドルが存在しなかった。でも今は、彼女がいる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。この駄文の主・マイケルえどがわです。
この記事はDiscord『THE IDOLM@STER Millionlive!談話室』主催・アイドルプレゼン大会向けの、ジュリアのプレゼン(候補)でした。「プレゼン文章は2,000文字未満」というレギュレーションを満たすために、色んな所を切ってはつなぎ合わせをしたものを提出しましたが、このサイトには削る前の文章をさらに再構築したもの投稿しました。
そしてお気付きの方もいらっしゃるとは思いますが……実はこの文章、以前私が書いた1stライブレビュー記事の焼き増しなのです。
今でこそジュリア担当Pを名乗っていますが、まだまだジュリアに関して知らない事ばかりです。その中で「ジュリアの魅力をどう伝えよう」かと考えた時、私がジュリアを知るきっかけを伝えるのがベターかと思いまして、上記の文章になった訳です。
ミリシタ配信から1年、そして5thライブから1ヶ月。最近ミリオンライブ!を始めた方に、ほんの少しでも「ジュリアはいいぞ」感が伝わればいいなぁ……と密かに思っているのは、内緒にしておきます。
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